2012年10月15日
浜岡原発県民投票条例否決
10月11日、県議会9月定例会が閉会となりました。
今議会最大の争点だった、
「浜岡原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案」の採決が行われ、
修正案が賛成17:反対48、
原案が賛成0:反対65でいずれも否決されました。
私は、双方に反対を記させていただきました。
「原発の再稼働に対し1票を投じ意見を言いたい」と
署名された方の数は、165,127人にも上ります。
掛川市内でも5,000人を超える方々が署名されました。
これだけ重みのある条例案と、
県議会での集中審査を付託された総務委員会の副委員長でもあり、
何より浜岡原発に隣接する掛川市から選出いただいている身として、
春先以降、この条例案に向き合い、
悩み、惑い過ごした数か月の様々な思いが、今尚交錯しています。
この条例案をめぐり当初から取沙汰されたのは、
残念ながら肝心の原発の事ではなく、
条例の内容や文章に法的不備が指摘された事による
投票実施のための技術論的入り口論でした。
条例と言っても、あくまで法律ですから、
その制定にはしっかりとした条文が必要になります。
この条例案も、第1条の「目的」から投票の執行方法や定義、結果の扱い方まで、
全27条、附則2条の計29条から構成されています。
内容は弁護士ら専門家に指導を受け作成したそうなのですが、
県の担当者が確認しただけでも、
そのまま問題なく使用できる条文がわずか6条、実に23条もの条文に
不備だけではなく法律を違反する内容もあるなどの指摘を受けてしまいました。
このため、議論が投開票実施の技術論に終始し、
肝心のどう原発と向き合うかという議論を深めることが出来ませんでした。
自民党の会派内勉強会でも、
「会派としての原発に対する方針を協議させて欲しい」と
他の1期生議員ともども意見をさせていただきましたが、
その議論は深まらず、
個人的な政治的力量を含め悔いが残っています。
勿論、県民投票を行った場合、
その結果には法的拘束力はありません。
あくまで原発は、先月発足した国の原子力規制委員会が
来年7月までに作成する新たな安全基準に沿って評価し、
それを受け国の判断により決められます。
県民投票を行えば、殆どの人がNOだと思いますが、
その結果は”強烈な国へのメッセージ”という事になります。
しかし8月に藤村官房長官が、
「再稼働に地元同意は必要ない」と言って物議をかもしたように、
現行の法制度上では、
その結果に誰も明確な責任を取りきれないのが現状です。
条例案の不備は様々ありますが、
突き詰めれば投票条例制定の前に、
投開票事務への各市町の協力体制を整える制度上の整備が不可欠で、
それさえ出来れば投票権を18歳から20歳に修正する必要も無いと思います。
ですが御前崎市など複数市が協力拒否をしているように、
全県下的な協力が見通せない状況下で条例を制定していいものか、
その執行にすら誰も責任を負いきれない状況下で可決していいものか、
感情論と責任の狭間で躊躇せざるを得ませんでした。
今、浜岡原発は、1~5号機全てが停止しています。
1・2号機は廃炉になることが決まっています。
津波対策の防波壁は今年末に完成予定ですが、
非常事態での予備電源確保不備のための工事が
少なくとも来年末かそれ以降までかかると言われていますので、
それまでは再稼働の可能性はゼロという事になります。
しかも最近起こった5号機への海水流入事故は、
将来的に使用可能状態になるのかも疑問視されていますし、
この他にも、福島の教訓から、
オフサイトセンターをもっと遠くに移設しなければなりません。
使用済み核燃料の処理はもちろん、
処理の当てもない燃料の乾式貯蔵施設の建設も不透明です。
まだまだやらなければならない安全対策は山ほどあります。
稼働していても停止していてもその危険度に変わりはないことは、
多くの方の知るところとなりました。
今も、これからも、
浜岡原発で最も重要なことは”安全対策”です。
しかし、今回の県民投票条例の議論を通じ、
当然の事ながら停止か稼働かだけが注目され、
肝心な安全対策が忘れられているかの様な印象を持ちました。
それは浜岡から遠くに住まわれている方ほど著しくなるとも思いました。
「永久停止」は後の安全対策などへの「思考停止」と
川勝知事が話したことがありました。
たとえこのまま停止し続けようと、少なくとも数十年、
今45歳の私が生きている間にすら消滅する可能性は低いと思っています。
それだけ厄介なものですし、
その厄介なものの支えがあって私たちの豊かな生活が構築されてきたのです。
その現実を直視し、
たゆまぬ安全対策と、同じくその監視は怠ることは許されません。
私は、将来的に浜岡が、原子力ではない、
新しいエネルギー産業の街として生まれ変わることを切望しています。
福島ではもう始まっています。
今浜岡にある送電設備を活用すれば、
洋上の風力や波、海底ガス等の新エネルギーへの道は、
長くとも可能性はゼロではないと思っています。
そういった新エネルギーの研究や取り組みへの支援も、
国と地方が総力を挙げて後押しする必要があると思っています。
私たち一人一人が、省エネ意識をもっと高める必要もあります。
少なくとも中部電力管内の原発依存度11%分の節電に向け、
全ての家庭と企業が努力していくことも大切です。
今回の条例案は、
私たち議員は勿論、県当局にも大きな衝撃を与えたと信じています。
安全対策を第一に、様々な角度から浜岡原発と向き合い、
県民への情報提供とともに議論を深めて行かなければなりません。
自分なりの思いを糧に、改めて努めていきたいと思っています。
Posted by 掛川★増田たかひろ★ at 00:26│Comments(0)